確定拠出年金の改正で「専業主婦も退職金がもらえる?しかも無税で」は本当か?

こんばんは、ふくみつるです。

2016年5月24日に確定拠出年金法の改正案が成立しました(2017年1月1日から施行)。

これによって企業年金のあるサラリーマンや公務員のほか、専業主婦(主夫)も同制度に加入できるようになりました。

これによって「確定拠出年金で自分年金を作ろう!」といったニュースが多く発信されています。しかし、あなたが専業主婦(主夫)の場合は、その加入をよく考えたほうがいいかもしれません。

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確定拠出年金自体はいい制度

前提として私は確定拠出年金制度には賛成で、自分自身も個人型確定拠出年金(個人型DC)に加入しています。

先日の法改正によりほとんどの国民が同制度に加入できるようになったことは歓迎すべきことでしょう。

しかし、つい昨日公開された東洋経済オンラインの記事はその中でも多くの人に誤解を生みそうだと思ったので取り上げることにしました。

専業主婦も退職金がもらえる?しかも無税で – 確定拠出年金でケースによっては1000万円も

なんともキャッチーなタイトルです。しかし、キャッチーな記事ほど注意して中身を見る必要があります。

なお、本記事では便宜上、専業主婦と専業主夫のことをまとめて「シュフ」と表記します。課税所得のない配偶者のいる人をさします。

この記事の間違っているポイント

最大のメリットは毎年の掛け金が所得から控除されることですが、このメリットはそもそも収入がほとんどなく、課税されていないシュフは享受できません。このことはこの記事にも書いてあるので問題ありませんね。

この記事でシュフが確定拠出年金に加入するメリットとして主張されている点は下記の2点です。

  1. 「運用益非課税」であること
  2. 「退職所得控除」が受けられること

1点目の運用益が非課税であることは間違いなくメリットですが、2点目はどうでしょうか。

そもそも課税される可能性があること自体がおかしい

これを考えるには、まずシュフが確定拠出年金に拠出する掛け金の源泉を考えてみましょう。つまりどこから掛け金を払うのか。この記事で想定されているのは課税所得のないシュフですので、おそらく源泉は「配偶者(夫や妻)の給料」でしょう。

この配偶者の給料は、すでに所得税や住民税が課税され、税金が引かれたあとのお金になっています。つまり、ここから毎月、確定拠出年金にお金を積み立て、それを引き出すときにさらにまた課税される、というのは明らかな二重課税です。

要するに定期預金などに置いておけば受け取り時もそのまま受け取れるのに、「受け取り方によっては課税されるかもしれない」ところに預けるわけですから、わざわざリスクを増やしていることになります。

まぁ「夫が妻の退職金を積み立てている」と考えれば妻の受け取り時に税金がかかるのは仕方ないのかもしれません。

いずれにしろ2点目に語られている点はシュフにとってメリットにはならないと言えるでしょう。

ただし法改正により「妻の確定拠出年金に拠出した掛け金も夫の所得から控除できる」ようになればこれはメリットに変わります。

この記事が触れていない最大のデメリット

運用管理手数料を忘れている

前項の点はさほど重要なポイントではありませんが、シュフが確定拠出年金に加入することの最大のデメリットは「管理コストがかかる」ということです。

確定拠出年金は運用管理機関に財産を預けますが、この運用管理に年額で3500円~7000円程度かかります(機関によってことなる)。

通常、掛け金の拠出による所得控除のメリットのほうが大きいのでこの運用管理手数料はさほど問題にならないのですが、前述のとおりシュフの場合は所得控除のメリットが受けれられないので、これは必ずマイナスです。

仮に下記の条件で算出してみます。

  • 30歳のシュフが60歳まで上限額(年27万6千円)を拠出
  • 運用はすべて定期預金商品で運用(手数料0%、利息0%)
  • 運用管理手数料は年6500円

この場合、60歳時点での掛け金の合計額は828万円、受け取れる年金額は808万5千円です。6500円✕30年で19万5千円の手数料を支払っているので、当然ですね。

同じ条件で普通に銀行預金で置いておいた場合は当然828万円が受け取れますので、あきらかに19万5千円を損しています。

ちゃんと運用するなら「運用益非課税」のメリットは大きい

 

ただし、上の条件は「定期預金的商品」という前提にのっとっています。これは実際に確定拠出年金の資産のほとんどが(残念ながら)同種の商品で保有されているという現実を考慮しています。

逆に、リスク性商品(投資信託など)での運用が前提の場合は、「運用益非課税」であるメリットが大きくなり、加入する意味が生じます

同条件の人がリスク性商品で運用し、平均で年0.2%以上の利回りが得られれば、受け取れる額はプラスに転じます。株式のインデックスファンドなどに投資すればこの利回りはほぼ確実にクリアできるでしょう。

その前提の場合は「60歳まで引き出せない」というリスクを考慮して加入を検討するといいでしょう。

まとめ:専業主婦や主夫に確定拠出年金が向かない理由

専業主婦や主夫(主夫)に確定拠出年金が向かない理由は下記の3点です。

  • 最大の魅力である「所得控除」を利用できない
  • 「退職所得控除」がメリットにならない
  • 定期預金的な商品だけが前提であれば管理コストが大きなデメリットとなる

ということでシュフが確定拠出年金に加入するのであれば

  • 投資信託などのリスク性商品での運用が前提
  • 60歳まで引き出せなくても困らない

の2点を満たす場合のみ、加入することにメリットがある、といえます。

無リスク資産は証券会社で個人向け国債を買って保有しておくか、利息など当てにせずに定期預金においておくのが一番気楽でしょう。

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